第5章 愛するということ

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ママの不審死を捜査していた刑事さんが第一発見者で、救急車を呼んでくれたから助かった。お見舞いには元部下の長谷川君と経理担当の年上八木橋さんが来てくれた。 「誰から聞いたの?」 「大場さんからですよ。あわや孤独死になんてなったら、最悪ですから。 真央さん、付き合ってる人とか居ないんですか?」 「いないわよ」 「……東海林とは?」 「どさくさ紛れに、彼との真実を聞き出してどうするつもり?」 笑いながら、交わすつもりで言ったのに。 「もし、居ないなら俺が」 「あんた、何を言い出すの?」と、八木橋さんが食い付いた。 「俺、真央さんのこと尊敬してます!東海林より頼りになりますよ」 晴馬とのことは濁して置くことにした。 私自身まだ、彼とだけは終わっていないことに今気付かされたから……。 「真央さんが自分の会社起業するなら、俺を使って下さい。 絶対に後悔させませんから!」 晴馬と一歳しか違わない彼に、突然プロポーズされてしまった。 でも、苦笑いしかできなくて申し訳ない。 「長谷川君の気持ちは嬉しいけど、しばらくは休むつもりよ。 良い機会だから、全身メディカルチェックして、 身も心も健康に生まれ変わる。話はそれから。 だから、今の話はとりあえず保留にしといてくれる?」 「わかりました!ありがとうございます!待ってます!」 27歳のわりに可愛い子。 私は部下には恵まれたいたんだなって思った。 夜、大場君が来てくれて大きな花束をプレゼントされた。 「真央さん。顔付きが大分男前になりましたね」 「あら、そお?」 「俺のマンション、部屋が余ってるんで、良かったらシェアしますけど?」 私の一つ下の大場恂一は良いデザイナーになったと思う。晴馬とは違うタイプの細身の長身で、髪型も服装も芸術家っぽくて、生活空間も相当オシャレしているような匂いがプンプンする。良い誘いだとは思ったけど、その前にまだ自分の心の整理が片付いてくれないと当分男との共同生活なんて出来そうにない。
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