11人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
高3の夜桜乱舞は歴代の夜桜乱舞の中でも特に盛況だった。
混雑した会場の中で、俺は電波女を探した。
何処かで踊っているはずなのだ。着物姿の女なんて、そうそういるはずがない。
例年より多い観光客と、例年よりも強い花吹雪に、俺は度々押し流されながら電波女を探した。
…いない、これだけ探してるのに見つからない。
俺は電波女の桜の木のところまで戻った。
こちらにもいない。
「見つかんねーよ…。」
俺は電波女の桜の木に向かって言った。
あまり気にしたことがなかったが、電波女のいた桜の木は周りの桜の木よりずいぶん小振りだった。
だが、それでも桜には違いない。ライトアップこそされない桜だが、十分に見事な、そしてどこか儚げな美しさを漂わせていた。
「きれいだな…。」
自分でそう呟いた事に、しばらく気付かなかった。
結局、電波女は見つからず、今年の夜桜乱舞は幕を閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!