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俺は慌ててスマホ画面を見た。
…嘘だろ。
写真には電波女の姿がなかった。
おじいさんの言うとおり桜が映っているだけで、人影すらありはしなかった。
俺は何度も写真を見た。
スマホの電源を入れ直したりもした。
けれど、電波女の姿は映っていなかった。
「もしかしてその桜の木、あの木なのかい?」
おじいさんは撤去されて行く桜の木を指さして言った。
そうです、と答えると、
「へぇ!本当に大したものだよ!」
とおじいさんは声を大きくした。
「僕は何十年も写真をやっているけど、あの桜をこんなに見事に撮るなんて、大したものだ!」
何だか褒められているようだが、とても喜べる状態ではなかった。
…電波女は?あいつは一体何だったんだ?
俺は必死で考えた。考えて考えて、何も答えなど出て来はしなかった。
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