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ラティーファに繋がる番号を押して向けたアレフの手から、国王は恐る恐る電話を受け取る。
「も…もし…っ…」
「あら。あなた?何事かしら?」
「う、うむ…っ…いや、なに…」
たどたどしい言葉が並んでいた。呼び掛ける国王の声は急な展開でかなり動揺している。
そんな国王を眺め、アレフは珍しくニヤリとした表情を浮かべた。
国王はアレフの視線からくるりと顔を背ける。
ラティーファは電話の向こうに繰り返し尋ねた。
「なにかしら?」
「う、うむ……」
「……?…」
「その……なんだ…」
「………」
「あの……」
「忙しいから早く言っていただけるかしら?」
「う、うむっ…そ、そうだな…ザイード達は…もうそちらに着いたか」
「…いいえ、まだよ…陽が沈む前には着くとは言っていたけど?」
ラティーファは答えながら様子の可笑しい夫に首を傾げた。
そのまま沈黙が続く向こう側に国王はぐっと息を飲む。
「そ、そうか…では余も……」
「………」
「余もっ…」
「……?…」
「いずれそちらに行っても構わぬだろうか…っ…」
国王の声はとても緊張していた。
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