古老の山

まるでこちらの心を見透かすかのような瞳で語りかけます。
「この村には年を取り、長くこの世に留まったものこそ真に尊きものとする習わしがありましてな」
よく見れば村長の家の至るところには献上品と思われる物品が供えられていました。
「村長は代々この村で最も年をとったもの、つまりは私が勤めております」
「なるほど。ですが若者たちはどうして見当たらないのでしょう。尊むべきご老体を放り出して一体どこにいってしまったのですか？」
村長はよくぞ聞いてくれましたとばかりに顔を緩めます。
「この村のしきたりでは若いうちは人間と認められていないのですよ。半人前以下の存在。この村に入るなんてとてもじゃありませんが、不可能です。彼らはただ我々年長者を尊むだけです」
もっとも旅人さんのような外部の人間は除きますが、と村長は付け足す。
「若者は人間らしい暮らしを致しません。山に籠りひたすら修行の日々です。子育ての期間を除き、休むことは許されません。皺が深くなり、頭髪が余さず白くなるまで山から降りてきません。そして始めてこの村の一員になるのです」
「ははぁ」
確かにこの山は最も修行に適した環境と言えるだろう。だが、しかし、この村の人々は人生のほとんどを修行に費やすことになる。