第1章 幸福な日々

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 全天周モニターの表示が消え、わずかな明かりを残してコクピットの中が暗くなる。  左操縦桿の手前にあるカードリーダーから〝()(かど)(あきら)〟と書かれたカードを抜いて、ジャケットの胸ポケットにしまう。  シートベルトを外して操縦席の後ろに回り、コクピット後部の内壁のドアを開けオーラムの後頭部から外に出ると、そこはVDの格納庫(ハンガー)――  じゃなくて。  ネットカフェの大部屋っぽい個室。僕が出て来たのは、その中に置かれた直径2mの球体。VDのコクピットを模したゲーム(きょう)(たい)。 〝()巧操兵(こうそうへい)アーカディアン〟  4年前――僕が小学4年生の頃、この町に引っ越した直後に始まった、ネット対戦可能なVRロボットゲーム。ここは、その専門店。  アーカディアンの遊び方は主に2つ。  アーケード版。  PC(パソコン)版。  ゲームセンターとかにある大型筐体で遊ぶのがアーケード版。みんなで使う筐体がいつ空くかはわからないので、時間の決まってるイベントにそこから参加はできない。  かといってプレイヤーが専用の会場に集まって――となると会場費やら交通費やらがバカにならず、そもそも身バレがNGな人だっている。     
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