第1章 幸福な日々

2/45
前へ
/615ページ
次へ
 たくましい体を黄金の甲冑(かっちゅう)で包み、獅子(ライオン)の頭の浮き彫り(レリーフ)を胸に宿した、機械仕掛けの巨人の闘士。  EVD-01〝オーラム〟  その頭部コクピットの操縦席に座る僕は、両側の肘掛け(アームレスト)についた操縦桿(レバー)の横向きのグリップを左右の手でそれぞれ握り、足下の2つのペダルに左右の足をそれぞれかけている。  幼い頃からこれまで見てきた、数多(あまた)のロボットアニメのパイロット達のように。  操縦席を(きゅう)(かく)(じょう)に覆うコクピットの内壁は全天周モニターになっていて。そこに映る外の景色は、岩だらけの白い荒野に、地球と星の浮かぶ黒い空。  ここは、月。  遠く前方に、敵対するもう1機のVDが降り立った。スラリとした体に白銀の甲冑をまとう、機械仕掛けの巨人の闘士。  EVD-02〝シルバーン〟  僕の最大のライバル、カグヤが乗ってる――月上空を飛んで戦っていた僕達は互いの攻撃で共に機体背部のメイン推進器(スラスター)を失い、月の重力に抗えなくなって落下した。 『じゃ、地上(ここ)で決着つけるわよ!』 「そうだね、終わらせよう!」  クリッ――カチッ  右手の親指で右操縦桿のダイヤルを回して使用武器を選択、押し込んで決定。     
/615ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加