俺の住む灰色の街でも

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【彼氏side】 あの日、君と駅のホームで最後に交わした言葉。 変わらず、君は無邪気に笑ってたね。 きっと寂しい思いをさせるつもりなのに。 それでも俺は、君の優しさにずっと甘えてばかりいた。 発車時刻が迫り来る駅のホームの、ベンチから見えた桜の木。 その桜が、最後に君と一緒に見た景色だった。 伝えたい言葉は山ほどあるはずなのに、上手く伝えられなくて。 今思えば、なんでもっとまともな言葉、 言えなかったんだろう……って思うんだ。 まだ幼かった俺には、くだらない話題しか出てこなかった。 笑顔で別れを告げるなんて、そんな大人びたこと出来るわけもなくて。 たぶん……必死に寂しさを紛らわしてたんだ。
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