第1話

2/8
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 皆様、改めましてこんにちは。私、猫に実ると書いてネコザネと申します。読み方が少々難しく申し訳ありませんが、どうぞお見知り置きを。  ここ、ベルカ帝国にて皇帝陛下のお抱え魔術師を勤めさせていただいております。 「いよいよか」  儀式の間の扉が開かれ、豪奢な衣服を身にまとった人物が現れる。 「これはこれは、陛下自らこのような場所にお越しになされるとは」  家臣や護衛も付けずに場内を出歩くとは本当に驚きである。相変わらず読めないお人である。 「この国の存亡に関わることだ。居ても立っても居られんよ」 「陛下の民を憂う御心に感服するばかりでございます」 「期待しているぞ」 「必ずや」  異世界。そんなものが存在するかと問われれば以前の自分ならば笑い飛ばしていただろう。いや、問の主に哀れんだ、冷めた目を向けていたかもしれない。だが、まさに今、その問いに答えるとすれば自信を持ってYESと答える他ならない。何故ならば、自分自身が異世界にいるのだから。現実は小説よりも奇なりというが、こんな奇怪なことがあっていいのだろうか。いやいや、この考えは良くない。もう何十回と自分の運命を呪ったというのにまだ足りないというのか。人生前向きにならねばどうしようもないことだってあるのだ。悲観的になってもしょうがない。     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!