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夏の思い出
今思い返すと本当に不思議な夏だった。嵐のあとの澄んだ夜空の中、ココアを片手に屋上に上がり、いつものように天体観測をしながらあの夏の日に起きたことを思い返していた。ココアを一口飲んだ時、空にあの日に見た星が流れ、僕の思い出を引き出していた。
僕は毎年、夏になると小学3年の時に亡くなった祖母の御墓参りも兼ねて母型の祖父が住んでいる北海道に帰っていた。中学2年の僕には、退屈なだけの1週間だった。楽しみといえば綺麗な田舎の風景を書くことと、僕だけの秘密基地。と言っても祖父に作るのを手伝ってもらい、屋根のない小屋のようなものだ。椅子と机も置いてあり、そこに望遠鏡と画材を持って行き、星を見ながら小さなランプ1つの明かりで絵を描くことが楽しみだった。だがこの年、1つ不思議な出来事があったのだ。
「ただいまお父さん!」
母が勢いよく鍵のかかっていない横開きの扉をあけて言った。
「おお。お帰り。楓お前大きくなったなあ」
「じじ、ひさしぶり」
祖父のことを僕はじじと呼んでいた。僕は靴を脱ぎ直ぐに祖母の仏壇へ向かい手を合わせた。
「ばあば元気?今年もきたよ。あいたいなばあばに」
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