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「あんた、ここで働くかい」
僕はえっ?と聞き返した。
聞き間違っているとは思わなかったけれど、唐突過ぎて意味がよくわからなかった。
「ここって……駄菓子屋で、ですか」
「ああ。さっきも言っただろ。あたしは駄菓子屋で生計を立ててるわけじゃない。道楽でやってるんだよ。別にお金がないわけでもないから仕事を持たなくても生きていける。世の中には、代々そういう家系っていうのもあるんだ」
「はあ」
「あんたにただで金をくれてやる理由はないけど、仕事をしてもらうのなら給料を払うことはできる。部屋は余ってるから住み込みでも結構だけど、どうかい?」
「それ……本気で言ってるんですか?」
だって、さっき僕はこの駄菓子屋に強盗に入ったばかりだ。
「つい今し方、悪いことをしようとした僕をそう簡単に住み込みで働かせるなんて、普通だったら怖くてできないじゃないですか」
僕がおばあちゃんの立場だったら、とっくにレジ横のボタンを押している。
「あんたが?怖い?笑わせるねえ。ブルブル震えながら、ポケットに手を突っ込んでピストルだって言い張られても、何も怖くないよ」
頬が赤らむのがわかる。僕は仕事ばかりじゃなく強盗にも向いていないと宣告されてしまった。
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