僕の仕事

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 もうだめだ。  さっき履歴書を買って支払いをする時、財布の中にはあと58円しか入っていなかったのをしっかりと確認してしまった。  次のバイトの給料はすでにアパート代と水道光熱費でぎりぎりの金額だってわかってるし、来月はバイトすらできるかどうか不確実だし。  そんなことを漏らせば、きっと「仕事を選ぶな」「働き口はいくらでもある」って言われてしまうだろう。でも、僕には肉体労働は無理。なぜなら、体力がなくて仕事にならないから。僕がすればかえって仕事が増えてしまう。頼むから辞めてくれないかな、って現場監督にお願いされた時、僕にはこの仕事が向かないんだって思った。  事務作業も苦手。貧乏育ちの僕はパソコンなんて触ったこともないし、スマートフォンを持つなんて夢のまた夢。何より、携帯すら持ったことがない。そんな僕に、「取引先にメール送っておいて」とか当然のように言われても。「エクセルの入力と、パワーポイントの資料の訂正」なんて言われてもちんぷんかんぷん。計算だって不得意だし、字もうまくない。そもそも、椅子に座ると睡魔が襲ってくる時点でやっぱり向いていないのだろう。  介護、倉庫の作業、コンビニの店員。どれもこれも、試してみたけど僕には難しかった。まず、バイト先はどこも殺伐としていて、初日に足を踏み入れた時点で気後れしてしまう。面接では「わからないことは教えますから大丈夫です」ってニコニコして言ってくれていたのに、いざ現場に出てその都度質問すれば、わかりやすい顔で煙たがれる。そういうことがいくつかあると、そこでやる気をそがれてしまう。こんな僕にも出来る仕事なんて、この世の中に存在しているんだろうか。  仕事をしたいのは山々。けれど、僕にできることが見つからない。一日の殆どを充てるのだから、もう少し息が楽にできる時間になればいいのに。  僕は決して死にたいわけじゃない。けれど、このままでは生きていくことができない。死んだ母さんが「どんなに貧乏でも、人様には迷惑を掛けるようなことはするな」って言っていたけれど、これ以上、どうやって頑張っていけばいいかわからないよ。
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