僕の仕事

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「おばあちゃん、これ、何だかわかる?」  手を突っ込んだまま、ポケットを見せる。 「何だ」  ぶっきらぼうに答えるおばあちゃん。強気なのも今のうちだからね。 「知りたい?」 「……別に」  おばあちゃんはそっぽを向いた。僕はカチンときて、思わず声を荒げた。 「おい!わかんないのか?ここにはピストルが入ってんだぞ?」  駄菓子屋のレジ金なんてあまり期待していないけれど、とりあえず、この空腹を満たすくらいのお金なら得られるだろうと思っていた。 「……なんだ、強盗か」  おばあちゃんはレジ横のボタンに手を掛けた。 「強盗さんよ、あんた一体いくら欲しいんだ」 「い……いくらでも……」  予想外の質問を投げかけられると、答えられなくなるのは昔からだ。だって、強盗に入られてそんなこと聞き返している光景なんて、ドラマでも見たことなかったし。 「ふうん。欲しけりゃやるよ。その前に一つ言っておくけど、ここはあたしの道楽でやってるもんで、ここのレジの金持って行かれても何も困らない。ただし、金があるってのはどういうことかわかるかい?思うことを思うように実現できるんだよ。このボタン一つで警察にも通報が行くし、こう見えて、うちの店には何十台もの防犯カメラが仕込まれてる。ガキの万引きも少なくないから、言い逃れできないようにしておかないといけないもんでな」
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