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当然ながら、私は怒るどころではありません。蛇を何とかしてくれ、と思っています。しかし、ゴルには通じません。私の様子を見ています。
その時、救世主が現れました。どこからともなく現れたのはメス猫のベルベット・通称ベルです。ベルは普段はのんびりやさんですが、ご飯が絡むとゴルを押し退けていく強さは持っていました。
このベルは、悶えている蛇を見るや否や、嬉々として飛びかかって行ったのです。一方、ゴルはベルと蛇との戦い……いや、蛇をなぶり殺しにしているベルの姿をじっと見ています。
そんな中、私は蛇をいたぶる猫らの姿を震えながら見ていました。情けない話ですが実話です。瀕死の状態で、バッタンバッタン暴れる蛇をいたぶる猫……私は、怯えた幼子のように見ていることしか出来なかったのです。
しばらくして、ベルは動きを止めました。何かを察知したらしく耳をピンと立てたかと思うと、大急ぎで下に降りて行きます。
続いて、ゴルも動きました。しかし、ゴルは何を思ったか死にかけの蛇を咥えたかと思うと……階段をとことこと降りて行ったのです。
その時、私は悟りました……ああ、誰か帰ってくるんだな、と。
猫を飼っている方には説明不要でしょうが、猫は聴力が凄く、人の足音やちょっとした息遣いなどを聞き分けます。飼い主が帰って来た時には、玄関で出迎えてくれたりします。
その時も、猫夫婦は帰ってくる誰かを出迎えるために、玄関へと向かったのです……死にかけた蛇のおまけ付きで。恐らく、蛇を捕まえたことを誉めてもらいたかったのでしょう。
で、私はどうしたかと言いますと……何事もなかったかのように、ゲームを続行しました。自分の部屋さえ無事なら、それでいい。後は親たちが何とかするだろう……当時の私は、こんなロクデナシでした。
やがて、下から母親のものらしき声が聞こえてきました。罵声のような声です。すると今度は、下にいるはずのバカ犬ブッチャー縮めてブチャが、何を思ったのかワンワン吠え出しました。
ブチャは恐らく、蛇の匂いや母親の罵声から我々が犬を仲間外れにして遊んでいるものと誤解し「やい! お前ら、何遊んでるんだ! 俺にもやらせろ!」と言っていたようです。
一方、私は聞こえないふりをしながらゲームで遊んでいました。面倒くさかったからです。
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