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「…あのさ…。」
周りの子が部活に向かっていく教室の出口から、私に近づき声をかけて来たのは幼稚園からの幼馴染だった。
「どうしたの、珍しいねー?」
高校に入ってクラスが違くなってからあまり話さなくなった幼馴染の翔。
「…頼みがあるだけどさ…。」
ゆっくりと言葉を選びならが、話しかけてくる翔は少し不安そうに見えた。
「何?」
「あっ、いや、ここだとあれだからさ…久々に一緒に帰らない?」
「いいよ!」
中学の時は、いつも一緒だった下校も高校生になってから無くなっていたのでなんだか懐かしくて嬉しかった。
「すぐ、支度するから下で待ってて。」
「わかった。」
彼は、それだけを言って教室から出て行く。私も、翔を待たせないように急いで準備をしてクラスに残っている友達に挨拶をしながら下駄箱へ向かった。
下駄箱にいる彼は、西日が眩しそうに目を細めながら校庭を眺めている。
「おまたせー!」
私の言葉に軽く手を上げて答える。
それから、特に言葉を交わすことのないまま学校を出た。
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