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学校から少し離れたところで、私から口を開いた。
「頼みって何?わざわざ教室にまで来るから、何事かと思ったよ!」
私の言葉に、彼は前髪をクシャッとかく。
昔から変わらない癖。
恥ずかし時とか、そんな時に彼がやる癖。
「…明日って暇?」
「うん、特に予定はないよ。」
私の前にまわりこんできた彼は、顔の前で手を合わせながら頭を下げて来た。
「今、好きな奴が居て…告白したくて、デートに誘いたんだけど…デートなんてしたことがないから、どこ行っていいのかもわからないから、明日…俺とデートして欲しいんだ!!!」
目の前の彼の言葉に驚きが隠せなかった。
それでも、耳まで真っ赤にして頼んで来た幼馴染があまりはにも可愛く見えてしまった。
「こんな事、お前にしか頼めないから!」
「いいよ!で、誰!!」
「つ、付き合えたら、教えるから…。」
拝んでいた手を下げて、私のことを真っ直ぐ見てくる顔がタコみたいに真っ赤で思わず笑ってしまった。
「あははっ…!!顔、真っ赤!!!その子の好きそうなものとか分かるの?」
彼は、小さく首を横に振る。
「分かんないから、お前がこういうデートがいいって所でいいから…考えといてくんないかなぁ?」
「了解…とりあえず、駅前に10時にしよっか?」
「わかった…じゃぁ、明日な!」
会話が終わる頃には、私の家の前だった。
彼は、手を振りながら来た道を戻って行く。
昔から、一緒に帰る時はわざわざ私の家の前まで送ってくれる律儀な幼馴染。
曲がり角で、翔の姿が見えなくなってから私も家の中へと入った。
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