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君は、いつも本を読んで居た。
桜の木の下で、いつも。
言葉を交わすわけでもなく、ただ本を読む君の隣に僕も座った。
桜の木にもたれながら、読書をする君を盗み見る。花びらが舞う中、白い君はとても綺麗だった。
風の音に混ざるように、君の手がめくるページの音が聞こえる。
名前も知らない君をここで見つけて、どれぐらい経ったのかわからない。
風に舞う桜につられて言葉つい溢れてしまった。
「…その本、面白い?」
僕の言葉に本に落としていた視線を持ち上げ、僕を見つめる君があまりにも儚げで驚いた。
彼女は、ゆっくり頷き微笑む。
それから、また本に視線を戻す君。
明日は、僕も本を持ってこよう。
本を読む君の横で僕はそんな事を思っていた。
遠くで手を振る誰かに気づき、彼女は立ち上がりペコリと頭を下げて立ち去っていく。
彼女の後ろ姿を隠すように桜の花びらがまた舞った。
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