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次の日も同じ桜の木へと向かった。
本を一冊だけ持って。
桜の木の下には、まだ彼女はきていなかった。桜の木の下から見える病院を眺めながら彼女のことを待つ。
桜並木の奥から来た彼女は、何も言わずに僕の横に腰を下ろし本を読み始めた。
そんな彼女の方を見ながら、僕は自分の事を話し始める。
「あそこに見える病院に母親が入院してて、その帰りに君を見つけたんだ。」
僕の言葉に彼女は、答えることはしないけど読んでいた本を閉じて僕の方を見ながら話を聞いてくれた。
「母は、退院出来るか分からないけどね…とても明るい人だからさ落ち込むとかできないんだよね。だから、僕も悲観しない事にしたんだ。」
彼女は、何も言わずに僕の手を握りながら微笑んでくれた。
それがあまりにも優しくて、知らないうちに涙が流れていた。
「……っぅ、ぁっ……あり…が……とう。」
泣く僕の頭を撫でながら、ぎゅっ抱きしめてくれた。『ありがとう』と何度も口にしていた。
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