清子

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清子

 昨夜はかなりの風雨だった。夜が明ければ一転して心地良い風が吹き抜ける晴天となった。  三瀬諒太は車を二時間ほど走らせ、残雪の山々が連なる美しい景色を望む青沢公園という所へ来た。山の麓に位置し、清流が陽光を煌びやかに反射させる。  平日にもかかわらず観光客で賑わっている。先週は高気圧配置が続き、おかげでむずむずしていた蕾もようやく開放され、その勢いで満開となった。それから一転、昨夜まではそれまでの仕返しのように低気圧が居座り風雨を見舞った。  諒太はリュックから一眼カメラを取り出し首からぶら下げる。車の上にも枝々が迫り出しており、ピンク色に染められた屋根のようである。  我慢できずに一眼を向ける。視界一面に瑞々しい薄いピンクが広がった。 清々しい流れの響きが広がる。それよりも広いであろう人の流れが川に沿って上流に向かう。その流れの中に点々とブイのように団体様の三角形の旗が浮き沈みしている。  諒太は人の流れに飲み込まれていった。知らない言葉も飛び交う。息継ぎをするように時折一眼を空に向ける。勾配を抜けると人波が波紋のように広がった。木々の根元にはブルーシートが漏れなく包囲している。 清流の響きが遠くなるのと入れ替わりで発電機の重低音が広がる。  カステラを買い、ベンチをなんとか確保した。カステラを頬張りながらカメラの液晶画面でプレビューをチェックする。陽で透かされたモザイク調のピンクが幾つも映し出される。  諒太は車に戻った。深い青の屋根は薄いピンクの斑点を帯びている。
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