奥底に眠る記憶の残骸

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 北のお屋敷に招待された私と神様。  私にはオレンジジュース、神様には温かい玉露のお茶が出された。 「迎えはもうじき来るそうだ。それまでここで待ってるといい」 「ふむ」  由岐さんからそう言われ、神様はぐるりと部屋の中を見渡し始めた。  お屋敷の造りは東と似たような感じだけど、ここにいる人達の年齢層が若干高めだね。東も色々な年齢の人がいるけど、高くても見た目三十半ば。ここは由岐さんこそ若く見えるけど、その他は四十代、五十代の人が多い。渋いおじさま方というのもいいもんだぁー。  と、いただいたオレンジジュースをストローでちゅーちゅー吸いながらそんなことを考える。  視線を感じ、そちらを見ると、畳の部屋に置かれた座高の低い椅子に座ったお爺さんがこちらをジッと見ていた。 「……」 「……」  お爺さんが何も言わないもんだから、ついつい私もつられてお爺さんをジッと見返す。  先に折れたのはお爺さんの方だった。 「元老院の者共から話は聞いていたが……本当に妙な気じゃ」  妙な……気? なに、それ?  初めて言われたんだけど、それって良い意味……じゃあないよねぇ。 「言霊成就……いや、治癒……再生……いずれにしろ、確かにこの力は秘匿されねばならぬ」 「おまけにこのような穢れを知らぬような幼子の姿。愛いとは思わぬか?」 「見目は関係ない。……お主は自分で社に戻れるじゃろ。さっさと戻らぬか」 「いや、なに。この子と約束をしていたものでな。散歩に付き合ってくれる代わりにこの子が今、一番知りたいことを教えるとな」 「なに?」  ……あっ! そうだった!  火事で本来の目的忘れそうになってた!
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