イノセント・アイ

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 初めてのキスは、微かにメンソールの香りがした。  それから彼と別れても、その香りとすれ違ったとき、彼を探してしまう私がいる。あのときの宝石みたいな深い黒瑠璃を思い出して。  こんな記憶は吹きすさぶ風に乗って、どこかへ消えてしまえば良い。でもそんなこと、どうやったってできはしないという諦めと深い絶望がある。  私は、薄まることのない思い出を生きている。
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