死体の在り処

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死体の在り処

 桜の下には死体が埋まっている。  昔、何かでそんな話を聞いた。  それを耳にしたのは子供の頃で、当時の俺は桜には近づきたくないとゴネていたらしい。でもある時、親の都合で花見に連れて行かれた俺は、その場にいるのが嫌で逃げ出した。その時に聞いたんだ。  桜の側に植えられていた松の側に『そいつ』は立っていた。そして、たまたま目が合った俺に凄い勢いで語りかけてきた。 『桜じゃない! 桜の下なんかじゃない! 俺がいるのはここだ! 松の下だ!!』  その後のことはよく覚えていない。  気づいた時、俺は病院にいた。  両親の話では、俺は一週間程行方不明になっていて、昨日、あの松の下で発見されたのだという。その時うわ言で何度も何度も『この木の下に死体がある』とつぶやいていたらしく、警察に松の下を調べてもらったところ、そこから白骨死体が出てきたということだった。  後日、警察が俺に話を聞きに来たけれど、あの時のことを話しても信じてはもらえなかった。  ただこの件以来、俺の中に根づいていた桜への恐怖心は消え、今では普通に花見もできるようになった。  その代わり、今の俺は松に近寄ることができない。 死体の在り処…完
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