第1章

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「私は結婚…してるの?」 「そ、俺とね。」 満面の笑みを浮かべる私の夫だと言う人。 その笑顔があまりに綺麗で、胸がドキンと跳ねた。 「足に力が入らないけど…私はどうなってたの?」 「階段から落ちて頭を打って手術を受けたんだ。」 「階段から…?」 「一気に思い出そうとするとパニックになるよ。少しずつ教えて上げる。」 「う、うん。」 ピンポーン 「あ、夕貴の両親だ。」 「私の?」 「ちょっと待ってね。」 夫の優人さんがインターホンの対応して戻ってきた。 お父さんとお母さん… ボンヤリした記憶はあるが、どんな人だったか思い出せない。 暫くして玄関のチャイムが鳴り、賑やかに入ってきた女性と物静かな男性 「夕貴、夕貴が目を開けてる!」 泣きながら抱きつかれても、頭は靄がかかっていて、どんな反応をしたらいいのか分からない。 頭を撫でながら涙を溢す女性に 「…お母さん…です…か?」 「お母さんが分からないの?」 女性のまた溢れ始める涙に、どうしたらいいか分からなくなる。 不安げに優人さんの顔を見ると、笑顔を返してくれた。
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