第1章

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「お母さん、夕貴は目覚めたばかりでまだ自分を取り戻せてないみたいです。」 「まあ、そうなの?」 驚きの顔を向ける女性に笑顔を向けたつもりだけど、上手く笑えているか分からない。 「高村くん、病院に行ってみたらどうかな?」 「はい、一度行ってみます。鼻の栄養チューブも抜いちゃったし…。」 「口から飲めてるのかい?」 「コップじゃダメなんですが…」 「どうやってるんだ?」 「はあ、お父さんの前でなんですが… 夕貴、水飲む?」 喉がカラカラで頷くと コップの水を含み 口移しに飲ませてくれる。口のなかが潤い美味しいと感じて自然にゴクンゴクンと飲む 目の当たりにしていた男性が頬を染めて視線を游がせた。 「コホン、まあ、仲が良くて何よりだ。」 「ステキ!」 さっきまで泣いていた女性が、目をハートにして両手を口許に置いて、羨望の眼差しでこっちを見ている。
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