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ガサガサと衣擦れの音
自分の口から漏れる圧し殺した呻き声
この光景…
急に胸がザワザワと騒ぎ出した。
なんだろうこの気持ち…
バチッバチッと頭の中で音がしてなにかが開く感覚
どす黒い雲が胸の中を覆いつくし
小さい針が心臓をつつきだす。
先程の甘い気持ちとは真逆の感覚と共に、忘れていた記憶が次々と溢れ出してきた。
「いや、やめて!」
「止まらないって言っただろ。」
高村くんの指が嫌で嫌で堪らない
次の瞬間
「他の女を抱いてたくせに!
高村くんなんて大っ嫌い!」
大声で叫んでいた。
その言葉に高村くんが固まった。
「…夕貴」
「夕貴だけなんて…
夕貴の為に生まれてきたなんて…
嘘ばっかり
隣の家にいつも女を連れ込んでたの?
信じてたのに…
大好き…だった…のに…う、うう…」
あのとき言えなかった言葉が吹き出した。
「夕貴!」
高村くんの腕が体を捕らえ、身動きできないほど強く抱き締められた。
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