第1章

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「嫌!やめて! 触らないで!」 腕から逃れようとジタバタするのに、力がなくて高村くんはびくともしない。 悔しくて唇を噛んだ。 「お願い、黙って聞いて! あのときのこと、ちゃんと話すから…」 「嫌!嘘つき!」 なおも抵抗にならない身動きを繰り返した。 「じゃあ、勝手に話すから。 夕貴が見たのは家政婦だ。 隣の家の掃除をしたときマスターキーを作り、掃除をした次の日から隣に住み着いていた。」 「嘘!」 「嘘じゃない。それを知らない俺は、酔っぱらって帰ってきてベッドで眠った。家政婦が息を潜めていたなんて思いもしなかった。 朝夕貴が来てくれるのを楽しみに眠ったんだ。 寝入ってどれくらい経っていたか分からないけど、電気を付けずに女がベッドに入ってきた。 酔いも醒めてないし、寝ぼけた俺は入ってきたのが夕貴だと信じて疑わなかった。 キスをして体に手を這わし女が声を上げたとき、おかしいと感じて手を止めたんだ。 その時夕貴が叫んだんだ。」
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