8人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
いつの間にか男の人はいなくなって、開いた扉の向こうから誰かと話す声が聞こえる。
喉が乾いてヒリヒリと痛む。
ゆっくり時間をかけて力が入らない体を僅かに起こして、ベッドの端をを掴みながら棒のような足をゆっくり下ろした。
何か飲みたい
欲に突き動かされるように立ち上がろうとしても立てなくて、ベッドの下の絨毯にうつ伏せ状態で転がった。
重い体を芋虫のようにして移動をしていると、先程の人が戻ってきてた。
「どこに行きたいの?何か欲しいの?」
床に転がる私の横にしゃがんで優しく声をかける。
「……。」
何も答えない私を有無を言わさず抱き上げ、ギュッと力が込められた
逃れようとバタバタしても力が入らず、力無く項垂れるしかなかった。
「夕貴、愛してる。夕貴を好きな気持ちに一点の曇りもないよ。
信じて、俺は夕貴が好き。夕貴がいないと立っていられない。
夕貴がいないとダメなんだ。」
抱きしめる人の言葉は、どこか他人事のように聞こえる。
何も答えない私に彼はさらに語りかけた。
「夕貴のためならなんだってする。今何が欲しいのか何がしたいのか言って。俺が夕貴の手や足になるから…。」
抱き上げてリビングのソファーに連れていかれ、景色が見える場所に下ろされた。
最初のコメントを投稿しよう!