第1章

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少し白けたブルーが広がり、遠くに山や建物が小さ く見える。 180度見渡せるパノラマが眩しくて目を細めた。 「きっと後一時間くらいでご両親が見えるよ。」 両親? 両親の顔がボンヤリ浮かんだ。 頭の中に霞がかかった感じで言葉に現実味がなくて、心が動かない。 また喉の乾きを覚え、立ち上がろうとして立ち上がれない私をまた隣の人が抱きしめる。 「何?、何か飲みたいの?」 ゆっくり頷くとキッチンから水のペットボトルと注射器の入ったコップを持ってくる。 「今、入れてあげるからちょっと待ってて」 そう言うと、男の人はコップに移した水を大きい注射器で吸っている。 鼻の辺りにムズムズするものを感じで、手をゆっくり持っていくと鼻から何か柔らかいものが出ていて 思わず引っ張ると呆気なくスルッと抜け、喉に何かが当たりゲホゲホと咳が出た。 「あちゃー、抜いちゃったね。」 手を止めて、ため息のような声で言った。 何を言ってるか分からず、目の前の人を見て直ぐに水に目をやると 「仕方ない」 注射器を口に当てられ 「口を開けて」 口に水を感じるのに上手く入ってこなくて殆どが口の横から顎を伝って溢れてしまう。 「最後の手段」 そう言うと 水を含み私の目の前、あまりに近い距離に男の人の顔。 逃げようとするも、後頭部を押さえられ抵抗の力がなくてされるがまま 口の隙間から少しずつ水が注がれ、乾いた口内が潤いだした。 たまった水をゆっくりゴクリと飲み込むと 目の前の人は唇を離して嬉しそうな顔をした。
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