月は何を見せるか

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まじまじと見上げられ、顔がひきつる。そんなに見つめないで欲しい。人族にとって目を合わすのが大切な挨拶に近いのを知っているが、ぼくにとっては喧嘩を売られていると同じ意味を持ってしまう。 キラキラとした目は肩の上を見ていて、流石にスリクスも居心地が悪そうにソワソワとしている。 「こら!何、お客さんに迷惑をかけているんだい。見てる暇があんならこっち来て手伝いな!」 そう言って店の女将さんは少女の手を引っ張っていった。 「すまんね、お客さん。三人部屋でいいかい?他に二人いるけれど、どちらもあんまり騒ぎを起こさなそうだからね、大丈夫だと思うよ。その梟は騒がないかい?」 「あぁ。スリクスは大人しいから、手を出さなければ何もしない。値段は?」 「三人部屋だから一人30ベアよ。今夜の夕食、明日の朝食、弁当つきなら40ベア。」 「わかった。はい。」 「うん、確認したよ。丁度今二人とも部屋にいるさ。」 手渡された銅銭を数え上げ、頷く。 「後二回鐘が成ったら夕食だ。遅れて食いっぱぐれないようにね。」 そう言って彼女は奥に引っ込んでいった。     
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