月は何を見せるか

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夜の海に浮かぶスリクスの羽を写したような舟は、小さくとも煌々と辺りを照らしている。スリクス自身はその体を闇に紛れさせ、嬉々として哀れな贄を狩っているだろう。 美しくも力無き月を睨みながら、後ろに問う。 「なんのようだ?」 彼が発したひゅっと息を吸う音は黒鷺の叫び声にかき消された。 「気付いていたのか。」 気付いていたのか、だって?当たり前だ。ぼくをなんだと思っているのだろう。 振り向けば、リーフは怒りか悲しみかが混ざった色の目をこちらに向けている。 「始まりの森に住む魔獣をどうやって手懐けた?もしや何か禁忌を犯したのでは、あ、え?は?お前は、いや、あなた様は、まさか…。」 今のぼくの目は月を映しているだろう。瞳の中に銀色の三日月を。 それを見てエルフ族らしからぬほどに彼は狼狽え叫んだ。 「あり得ない。彼の一族は何十年前に滅んだはずだ。どうしてその証を目に宿している!?」 本当に分かっていないのか。 「ぼくは生き残りだよ。たった一人のね。…それと、スリクスはぼくがまだ森に住んでいたときに出会ってからずっと一緒にいる。リーフが思ったようなことは何もしていない。」     
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