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呆然と突っ立っている彼を背景に、スリクスの声が響く。もう少しすれば彼は帰ってくるだろう。その前に話を終わりにしたい。
「もう過去のことだ。別にそこまで隠すつもりは無いけれど、言いふらしては欲しくない。」
そう告げて、宿へ向かい始める。
腕を空に差し出せば、そっとスリクスは優しく止まる。何を食べてきたのかな?鼠か蛇か。彼の目は真ん丸で猫みたいだ。
「待って、待ってくれ!」
足を止めてため息を吐く。話を聞いていなかったのか?
「貴女方一族が本当に外の民に負けてしまったというのか!?」
っつ!
胸を掴み上げる。
許せない、赦せない!
彼が苦しそうにうめくのを観察する。何の権利があって聞くのか?
今のぼくの顔は酷いものだろう。
ホー、ホーと声がぼく達の間を割いた。
うるさい。邪魔をするというのか?
「いた!」
ちくっとした痛みがいきなり感じた。
リーフを手放し、頬をおさえる。血は出ていない。
「何を、す、るの…。」
スリクスは何を悪いことなどしてないように平然と見返してくる。その静かな目は、今自分が何をしていたのか、嫌がおうが、見させている。
げほっ、げほっ、と咳き込みうずくまるリーフはそこにいた。
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