9人が本棚に入れています
本棚に追加
出会い
ホウ、ホウ、 ホーと鳴き声が耳に入った。悪夢は声に崩され、安寧の闇は遠ざかってしまった。
目を開ければ、銀色の毛玉がうろうろしている。近づいてきて、目をパチパチさせているのが見えた。
呆然と見つめ気づく。銀梟の子供だ。なぜここに?子の親はいないのだろうか?それも人懐っこい。銀梟は警戒心が強く、珍しいことに群れを作り、さらに結束が強い。狩りが上手かったラインおじさんは銀梟が一匹だけしかいなくても襲ってはならないと言っていた。銀梟は仲間を殺されたことは決して忘れない。必ず群れで復讐する。
そんな銀梟の子供がなぜこんなところに?この大きさならまだ親元で育つだろう。
そう考えて息が止まる。もう愛してくれる人達はいない。喪ってしまった。この雛も?
離れてく様子のない雛にゆっくりと伸ばす。触れて撫でる。気持ちよさそうになすがまま。
起き上がって抱き上げる。
温かった。トクトクっと小さな音が聴こえ、ホッ、ホッと鳴いている。
「お前も家族はいないの?」
何も答えるわけはない。わかっている。でも…、行き場の無い雛が自分に重なる。
気づいてしまった。この雛のように守ってくれる親はいない。もう誰も、誰も抱き締めてくれる家族はいない。見てしまった。自分のもうどうしようもないこの心の傷を。
「うう、うつ、うわぁー!何で、何で!?痛い痛い!かあーさん、とうさん!みんながなんで。 う、うううう…。わかんない、わかんないよ…!なんでなの?どうすればいいの?あ、ああああ!」
一度あふれでた涙と声は止まらず温かい子を抱き締めながら泣き叫んだ。
何も考えず、あの事を、嘆いて悲しんで哀しんで苦しんで恨んで。
泣いて叫んで何かすがって。ユグドラシルに乞うて。始祖に願って。温かい雛に頼んで。
最初のコメントを投稿しよう!