むかしむかし…。

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まず最初に作った実は樹がとっても力を込めたので、自ら光り輝き、とても強い力を持っていました。その実は地面に植えるには余りにも眩しかったので、葉っぱの内側にくっつけました。それが今私達を照らしてくれる太陽です。 葉っぱの裏側はそれはそれは美しい青だったので、雲がないよく晴れた日には青色を見ることができます。 大きな樹はもう少し力を弱め、沢山の実を作りました。これも光り輝いていましたが、軽く落ち着きがなかったので、上へ上へと飛んでしまい、それは星となりました。ほら、だから今も太陽の力が弱まるとき、その美しい星が見えるのです。 そして、またもう一度作りました。出来たのは樹にそっくりな幾つもの植物でした。地に根差し、どんどん生まれ育ちました。 そうして、やっと落ち着いたころ、樹は子供達を見て思いました。 自分で動けたならいいのに。 そう思った樹は魔獣を生み、獣を生み、沢山の種族を産み出しました。それぞれは実が落ちたところで暮らし始めました。 他にも沢山の樹にまつわる話があります。種族の中で最初に産まれ出た始祖や、この樹を囲む恐ろしくも豊かな始まりの森について……など。 余りにも昔過ぎて、覚えているのは、長寿であるために言い伝えられた一族だけ。 後世の人々が知るのはユグドラシルと呼ばれる偉大な樹とそれを守る始まりの森には大きな宝が眠っているということ。     
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