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ドドド、という足音が一気に近付いて来た後、突然、脱衣所が騒がしくなる。
「お風呂入るよー!」
ああ、子どもたちの声だ。
有難いことに、俺はじっくり一人の時間も堪能できたからな。
いいぜ、いつでも入って来いよ。
続きは賑やかな入浴時間を、楽しむとしよう。
ガラガラ。
風呂のドアが開き、子どもたちが歓声と共に、わぁーっとなだれこんでくる。
おいおい、床は滑るから気をつけろよ。
しっかり体は洗えよ。
汚れを落とすだけじゃなく、体の疲れ具合や、痛いところがないかも、確認しておけよ。
俺の忠告が耳に入ったのかは定かでないが、大騒ぎしながらも、全員が体を洗い始める。
そうそう。それで良いんだ。
石けんを良く泡立てて、優しく、な。
あはは、さすが子どもは凄いことを考える。4人きょうだい全員で「背中を洗い合うための円」が一瞬で完成だ。このさすがのフォーメーションは、微笑ましい温かさで満ち溢れていて、とんでもない一体感だ。俺も脱帽だよ。君たちにとっては日常のことかもしれないが、素晴らしい光景を見せて貰って、俺は感謝している。
体を流し終えた子どもたちが、順に湯船に飛び込んで来る。
「ねえねえ、遊んでも良い??」
ああ、勿論だ。
子どもたちにとっても、今日というこの日に俺と一緒に湯船に浸かれることは、特別なことだからな。十分に遊んでくれ。
「大回転!!」
俺の身体の周りで、子どもたちが全身を使って大波を作る。俺は波に揉まれて揺れ動き、全身にお湯を浴びる。
これも悪くない。
少々手荒だが、俺一人ではできない、刺激的な動きを味わえる。
「いいにおいだね!」
子どもの一人が、俺に顔を寄せる。
当然だ。
成長するということは、それなりの経験を積みながら、自分独自の豊かな香りを、体内で成熟させていくものだ。俺は少なくともそう思って、日々自分を内面から磨くべく、努力をしてきたつもりだからな。
まぁ、そうなんだが。
なんというか、改めて言葉にして伝えられると、嬉しいものだな。
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