3.初めての「殺し」

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「都合のいいことほざいてんじゃねぇぞ! これ以上俺を失望させんなクソが。てめぇは最後の最後まで、出来損ないの半人前かよ」 「師匠――」 「てめぇは俺に似てたから、目ぇかけてやってたってのによぉ」  ふと、師匠の顔付きが和らぐ。  殺気じみた鬼の形相ではなく、ときどき見せてくれた、世話焼きの優しい眼差しがあった。 「てめぇは俺の生き写しだ。貧民層出身で、糊口をしのぐために何でもやった。自然と人を殺すことも覚えた。そこを偶然、暗殺者に誘われた。俺もそうやって命を繋いで来たんだ」 「……そうだったんですか」  冷徹な師匠が、青年を手塩にかけて育てた理由。  冷血な師匠が、青年に手厚く接してくれた理由。  この世界で生きて行くには、師匠と同じ道をたどらなければいけない。しかし、青年は背いてしまった。今までの温情も慈悲も、何もかも裏切ってしまった。 「なんで俺に出来たことが、てめぇに出来ねぇんだよ!」
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