3.初めての「殺し」

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 師匠の手許で、鞘走りする抜剣の音が聞こえた。  粛清の時間だ。 (戦わなければいけない。師匠に勝って、生き延びなければいけない)  青年も腹をくくるしかない。  迷いを捨てないといけない。  途端に、師匠の姿が消えた。  毎度おなじみの手だ。  師匠は人の死角を突くのがうまい。気配だって消せる。  今まで、青年は逆立ちしても勝てなかった。師匠は凄腕の暗殺者だ。実力には雲泥の差がある。青年に勝てる見込みなんて、あるわけがなかった。  ――普通の場合なら。 (左脇の、斜め後ろ!)  青年は、自分の隙がそこにあることを自覚している。  過去に何度も、そこを狙われたから知っている。だから今も、師匠がそこを攻めて来ることは予測していた。  無論、予知しただけで勝てるとは思っていない。師匠の出方が判明しても、その神業に体が付いて行かない。  ――が。 (腕の一本くらいはくれてやる)  師匠と戦闘したら、無傷で済むわけがない。  だから青年は、すでに覚悟を決めていた。  ――肉を切らせて骨を断つ覚悟。
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