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「……お世話に……なりました」
深々と頭を下げる。
師匠がそれを認識できたかは、判らない。
すでに息は止まっていた。
――勝った。
ただ、その事実だけが残る。
(俺は、生き延びた……ぞ……)
青年は虚ろな面相で、そう噛みしめた。
勝つには勝ったが、意識が朦朧とする。こっちも満身創痍だ。切断された左腕の断面を布で縛り、よろめきつつ歩き出す。
だが、出血が止まらない。傷がでか過ぎる。
(さて……どこへ行こう)
行くあてがない。
血もない。
体力もない。
痛みで感覚が鈍化している。
それでも、歩かなければいけない。
「……血が足りないな……だが、俺は生きなきゃいけない……あの娘に、見栄を張ってしまったから……絶対に、生きて……あの娘の行く末を、見……守……る……ん……」
言葉が途切れる。
青年は無言で、路地の影へ姿を消した。
寄るべのない、暗闇の深淵へ。
*
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