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「ここが、ブルタニユ家か」
月のない夜。
曇に覆われた、新月の宵。
明かりのない、一面の黒。
闇に溶け込んだ青年は、黒装束を潮風にたなびかせて、海辺に建てられた目的の屋敷へ立ち入った。
塀を飛び越え、中庭へ降り立つ。
なるほど、警備がない。
手薄なんてものではない。あからさまに無防備である。
これでは、青年以外の本物の泥棒も招きかねないな……なんて思っていると、本当に何名かの泥棒と出くわしたので、準備運動も兼ねて喉笛を掻き切ってやった。
(よし。大丈夫。落ち着いて殺せた。体調も万全だ。初仕事は簡単にこなせる)
手応えを確信しつつ、青年は屋敷の窓を破って、中へ侵入した。
間取りもすでに、師匠から教わっている。書状にも略図が書かれていた。
やはり依頼主が、ブルタニユ家の縁者なのだろう。
目障りな跡取り娘を亡き者にして、縁者が乗っ取る算段に違いない。
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