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教わった通りに最上階へ登り、ひときわ大きな扉の部屋へ忍び込めば、思った通り、標的の娘が眠る寝室だった。
瀟洒な天蓋付きのベッドである。
薄絹のカーテンに覆われた向こう側で、すーすーと寝息を立てているのが聞こえる。
室内の床には、柔らかな絨毯が敷き詰められており、足音を立てずに接近できた。
ちょろい仕事だ。
青年はゆっくりと歩み寄る。
壁や棚には、高そうな絵画や彫刻が飾られているが、そんなものに興味はない。
まっすぐにベッドへ向かい、カーテンを手で引いた。
「……遅かったですね」
「なっ――」
青年は、咄嗟に飛び退いた。
一定の間合いを確保する。
ベッドには、娘が座っていた。
すーすーと落ち着いた呼吸を立てているが、上半身を起こし、青年の接近を歓迎するかのような姿勢だった。
長い金髪で、小さな顔で、白い肌が透けそうな美少女だった。寝巻きのネグリジェをしどけなく着崩した無垢な少女は、青年の姿を眺めすがめつ、ゆっくりと口角を上げて、えくぼを刻んだ。
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