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待ちに待った閉庁時間だ。そろそろ、帰宅のため婦人警官が私服に着替え始める。
僕は、科学捜査研究室のいちばん奥にある自分のオフィスで、胸を高鳴らせながら、デスクトップの表示をカメラ画像に切り替えた。
クテシフォン市警本部ビルの十階にある職員更衣室の女子更衣ブース。合計十五個のそのブースの天井と床下に隠しカメラを設置し、それらの取得した映像を四十二階の科学捜査研究室のオフィスまで転送する回路を作るのは、クテシフォン市立大学始まって以来の天才と称えられたこの僕、J・P・ニコライ博士にとっては、朝飯前と言ってもよかった。
そして閉庁時間にはこうやってオフィスに施錠し、仕事の手を休め、スナック菓子を頬ばりながら、カメラの送ってくる貴重な映像を心ゆくまで堪能するのが僕の日課となっている。
僕は椅子にふんぞり返り、デスクトップに表示された十五個の更衣ブースの映像を眺めた。
おかしいな。いつもなら昼勤を終えた婦人警官たちがいっせいに着替えを始めるのだが。今日はだれもブースに入って来ない。
僕がじれ始めたとき、ようやく赤毛の婦人警官がブースに入ってきた。
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