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季節外れの雪
ー私達、もう会わない方がいいと思うのー
ホントは、そう言われた時、俺の胸はきゅんとした。
あの時、俺は何でもないふりをしたけれど、別れを告げられて、初めて佳乃を意識したんだ。だから、胸が締め付けられた。
一緒にいて当たり前だったから、それまで気が付かなかったんだ。
俺、佳乃のこと、好きなんだって。
青空を裂くように、細くて白い煙が、天へと昇っていく。
流れる涙を拭えないまま、俺は空と白煙を眺めていた。
風もなく、暖かい陽射しに包まれながらも、それは俺の涙の上にそっと落ち、そして溶ける。
空は晴れているのに、いつしか白くやわらかな雪が、やさしく俺を包んでいた。
ー約束、守れなくて、ごめんねー
空からのメッセージは、俺にそう言っている様な気がした。
「今日で、丁度一年目だよ。ありがとう、佳乃」
頬に落ちた雪は、静かに僕の中に溶けていくかのように消えた。
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