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駆け足の様に春、夏と過ぎ、山々が紅く染まり始めた頃、私達は近くの公園にいた。
強めの抗がん剤に苦しんでいた私は、余り遠出が出来なかったからだ。
それでも、隣でブランコを揺らしている拓海は、私を愛おしそうに見つめてくれる。
「な?」
「ん?」
突然、拓海に声を掛けられて、私も小首を傾げて返事をする。
「あれから、半年経った、だろ」
そう、私が拓海に「告白」してから、もう半年が過ぎていた。
「これからも、佳乃の余命は半年だ。改めて、これからもよろしくな」
照れながらそう言う拓海の頬は、夕日に染まってさらに赤みを増していた。
ブランコに座ったまま、拓海はその右手を私に伸ばしてきた。
私もそれに答えるようにその手を握ると、拓海のぬくもりが伝わってくる。
私のぬくもりは、いつまで拓海に届けられるのだろう。
そう思って、不意に涙が出そうになる。
でも、その時、遠い目をして拓海は夕日を見ていた。
私は、そうと悟られない様に、必死に笑顔を作りながら、同じ方を見る。
「来年も、同じ夕日を見よう、な」
「・・・・・・うん」
まだ少し暖かい日差しと、暖かい拓海の手のひらを感じながら、このまま時が止まってくれたら、と、初めて思った。
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