そして、春

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「おい、佳乃、何眠ってんだよ。起きろよ。起きて、一緒に・・・・・・」  こんな時、起きろなんて言うのはわざとらしいなどと思っていたけれど、いざ自分がその立場になったら、同じ事を言ってしまう。 「佳乃、あれからもうすぐ一年だぞ。記念日は、一緒に祝おうって言ってたじゃないか」  佳乃は動かない。  でも、声は届いていると信じたい。 「秋には一緒にあの夕日を見るって言っただろ」  佳乃に顔を近付けていたから、気のせいだったのかもしれない。  でも、確かにその時、佳乃の右手の人差し指が、ぴくっと動いたのが視界に入った。  それを見て、俺は必死になった。 「佳乃の命は、あと半年だぞ!だから・・・・・・だから」  俺は、その右手を握りしめた。 「佳乃、目を開けてくれよ・・・・・・」
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