卒業式前日

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「私達、もう会わない方がいいと思うの」  私は放課後、川中島南中学校の正面入り口に続く、まだつぼみも付いていない桜並木の下で、拓海に告げた。 「はあ?いきなり何それ」  拓海は、右目だけを大きく開いて、体を斜めにしながら、私の顔を覗き込んだ。  拓海は身長百六十センチで、私の百四十八センチの眼前に顔を合わせるには、しゃがみ込むか、腰を曲げないといけないから。 「だから、ね、もう、終わりに、し、しようって」 「だからさあ、いきなりどういう意味かって聞いてんの」  回りくどいいい方じゃあ通用しないんだ。  そうよね。男子って、女子と違って、ストレートに言わないと分からないんだよね、きっと。 「私達、終わりにしましょ」 「お、終わり?」 「・・・・・・別れましょ」  胸が詰まる。  ストレートに別れを切り出す事が、こんなに苦しいなんて思わなかった。  でも、仕方ないんだ。拓海のためだから。 「あのさあ」  拓海が呆れ顔で私を睨んでいる。  それもそうよね。いきなりこんな事言われたら、誰だって・・・・・・ 「俺達って、付き合ってんの?」 「・・・・・・え?」
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