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「あ、あのね、拓海」
喉の奥につっかえている何かが、なかなか出てきてくれない。
私は俯いてしまい、拓海の表情は読み取れない。
それでも無言って事は、きっと次の言葉を待ってくれているのだろう。
伝えておきたい。
友達としてでなら、きっと言える。
「この間、私、病院行ったじゃん」
「え?あ、おう」
「手遅れ、だって」
「は?」
「だから、私・・・・・・末期の」
やっとの思いで、そこまで言った。
堪えていた涙が頬を伝う。
思えば、兆候は前からあった。
めまい、腹痛、吐き気なんかも時々。
でも、こんなもの、放っておけば自然に治る。
そう思っていた私は、親にも言うことなく、それを放置していた。
聞くところによると、肝がんは発見が遅れるらしい。
肝臓は、自己修復力が高いため、直ぐには体調不良とは結び付かない。
異常に気が付いた時は、殆どが他に転移していると。
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