我輩も猫である。

3/5
前へ
/5ページ
次へ
 近所の犬が我輩を見てくる、大きな声で吠え出したので我輩はこの場から逃げる事にした。    寒さが厳しくなってきた。  この車という物の下も中々寒い。  我輩を呼ぶ、下僕の声が聞こえる。段々と近くなっているが我輩はこの下から出ない。    あの声は我輩を甘い声で釣ってその後に叩かれる声だからだ。下僕の癖に生意気である。  我輩がじっと我慢していると、声は小さくなっていった。  何処からか、ゴーン、ゴーンと大きな音がする。  音の鳴る方にいくと、沢山の人間が居た。TVで見た髪の毛がない人間が大きな逆様にしたお椀を木で叩いている。  我輩は知っている、TVでみた坊主という人間だ。ああやってお正月を呼ぶらしい。我輩が見ている前で逆さにしたお椀を叩いている。  もしかして、この沢山の人間は皆お正月を視に来た人なのか。我輩もお正月を見てみたい。  しかし、腹が減った……。人間達は皆美味しそうな物を食べている。  我輩は一つくれと、人間の一人に寄り添うと、あちこちから手が伸びてきて我輩を撫で回す。今は撫で回すよりも、その旨そうな物をくれ。  我輩の前に串から取られた肉が並べられていく。  匂いを嗅ぐと旨そうな匂いがする。うまい。うまい。先ほど食べた草よりも旨い。     
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加