1/4
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ

「お父さんいないね。どうしたの」 「いつものアレよ」 「今度は何……」 「お食事が終わっても卓袱台から動かないから、お掃除しますから移動してください……って言ったら怒ったのよ」 「ふうん、子供みたいね」 「そうね。子供みたい」 「お父さん、今度はどこ行ったんだろう。雅子おばちゃんの所かな」 「さあ」 「呼んでこようか」 「お仕事の催促が来たら頼むわね」 「いつ来るの……」 「塩梅からいえば、明後日か、明々後日……」 「じゃあ、今日のうちに捕まえないと、お父さん、逃げちゃうよ」 「お父さんだって、お金がないから行先は知れてるわよ」 「でも前は新潟にいたじゃない」 「知り合いを頼ったのよ」 「お母さんの知り合い……」 「……じゃないけど、わかるのよ、大抵。どこに隠れたかくらい」 「すごいね」 「すごくないわよ。ちょっと記憶が良いだけ」 「わたしもいろんなこと覚えるのが得意なのは、お母さん譲りね」 「ああ見えて、お父さんの方がすごいのよ」 「また始まった」 「何が……」 「お母さんの、お父さん自慢」 「だって、お父さんがお母さんの持ってる一番いいものだから」 「世間の人なら離婚してるってさ」 「離婚しても無駄よ」 「どうして」     
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!