僕の足元を駆ける、春

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春の風が吹き抜け、僕の髪をさらっていく。柔らかな日差しを全身に浴びていると、足元から声が聞こえてきた。見下ろすと、そこには大きなランドセルを背負った女の子。春の妖精のような、眩しい笑顔が印象的だ。一生懸命に友達の後を追いかけていく。風を切って、駆け抜けていく。いいな、と呟いた声はかき消された。今の自分が嫌いな訳じゃない。僕を見上げる人達の笑顔は大好きだし、腕に留まる鳥も可愛くて好きだ。この学校のことも、勿論。それでも、憧れる。自由に走って跳んで、風に身を任せるだけじゃなくて。自分の意思で動くというのは、どんな気分なのだろうか。僕には分からない。どこにも行けず、ただひたすらに長い時を生きていく。僕には分からない。自分の意思で、どこへだって行ける人々。あぁ、いったいどんな気分なのだろう。僕の足元を駆ける人は。僕の腕から飛び立つ鳥は。僕には、桜の木には、飛べる自由が分からない。
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