見つからない……あ、ポリープはあった

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見つからない……あ、ポリープはあった

  「あー……見つからねえなぁ」 「え!? 先生!ポリープ! バッチリ映ってますよ!?」 「いや、あ、すまん。違うんだ」  上部内視鏡検査の最中、隣にいた研修医に指摘されて、俺は我に返る。前投薬のおかげで、うつらうつらしている患者の前とはいえ、医師としてあるまじき態度だった。今は天使の事は忘れろ!と自身に言い聞かせて、胃の内部が映されたモニターに向かい合った。  立派なポリープがモニターに映る。手元の鉗子挿入部から掴み取るためのワイヤーを入れつつ、俺は狙いを定める。 「検体固定液、用意しておいて」  画面を見ながら隣の看護師にそう言えば、もう用意してありまーす!と軽快な返事。ホント頼もしいこと!と俺は看護師にお礼を言う。心の中で。  ポリープを焼き切る瞬間、パチッとモニターの中で光が弾ける。同時に止血を施し、ゆっくり掴んだポリープをカメラ内から引く。そして、用意された検体固定液の中に入れた。 「病理回して」 「伝票ください」 「わーってる。今オーダー出すから」  内視鏡カメラをゆっくりと引き抜く。戦端が出てきたところで、俺はうつらうつらする患者に声をかけた。 「終わりましたよ。また後日説明しますね」 「……」     
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