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「騒がしくして申し訳ありませんでした」
返事は返ってこなかったが、小さく頷いた患者に有志は笑顔を返した。
「昼休憩入るから、何かあったらピッチに連絡して。二時間経ったら飲食オッケーってことで」
時計を見れば、時刻は十三時半。時間を自覚すると同時に腹が減っていたことを思い出す。内視鏡室を後にし、売店に寄る。しかし、ロクなものが売っていない。早々にカップラーメンコーナーに向かい、いつもの味噌ラーメンを手にした。
毎日同じもので飽きないかと聞かれれば、ノーだ。ただ多忙のため、まともに食事も摂ることができない。腹に入れば何でもいい。何でもいいなら、間違いの無い知っている味を食べる。そんな日々が続いていた。それに加えて、居なくなった天使のことを考えると頭が痛い。この病院で働いているはずだが、どこの病棟に顔を出しても見つからない。普段は寄り付かない、整形外科病棟にまで覗きに行ったりもした。
けれども、見つからない。
あれほどの女は、もういない。そう思ってしまうほどに、可愛くて、いい女だった。
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